小田切製陶所は、デザイナー小田切裕高の陶デザイン工房です。
温暖な気候の瀬戸内海に面した港町にて、ミニマルデザインかつロングライフなオリジナル陶デザイン製品の製作・販売を行っております。
よりよい暮らしに〝必然〟なデザイン
幼少の頃より、図画・工作・絵画・習字が大好きでした。空き箱をセロハンテープで繋ぎ止め、ボール紙を文房具屋さんに買いに走っては、モノサシとカッターを駆使し、〝欲しいモノ〟を日々、作り続けていました。
そうして、プロダクトデザイナーを志したのも自然な成り行きでした。そこには、建築家だった父の影響が大きくあります。「畳の大きさや庇(へり)の深さ」、「無垢の木と偽物の木」、「タイポグラフィやモジュール」、「工芸や陶芸」など、暮らしの中でそれらはごく身近な存在でした。
ただ、身を置いたプロダクトデザイン業界では、売らんが為の〝大量生産・大量消費〟といった現実が待ち受けていました。「自分のしたいデザインはこれだったのか?」そんな思いが心の片隅で大きくなっていきました。
その後、いくつかの転職の狭間である日思い立ちました。「そうだ、陶芸なら粘土を成形して焼くことで、これまでのデザイン経験を活かしたオリジナルのプロダクトデザインができる。自分のデザインを受け入れてくれる人に直接提供することができる。」と。その時、滞在していたニューヨーク・マンハッタンで陶芸教室に飛び込み、「これはいける」と直感。帰国して陶芸を一から学びました。
〝陶芸家〟や〝陶芸作家〟と呼ばれるとどこか違和感があります。幼少の頃の紙工作のように、自らの手で一から焼き物を造形しますが、何を作るのか、どんな機能があるのか、再度作れるのか…あくまでデザイナー視点の製品づくりと捉えています。反面、スケッチや図面では表しきれない〝火の仕業〟ではじめて完成する陶芸の特性も製品の個性として大切にしています。
デザインとは、よりよく暮らすための〝必然〟なるものだと思います。雨上がりの庭先に出た時、逆光の日射しの中で雨滴を弾いて光る蜘蛛の巣を目にしました。その放射状に広がる〝餌を捕獲する〟という機能に特化した見事な螺旋形状と無駄のないフォルムは、まさに生きるためにたどり着いた〝必然のデザイン〟と言えます。
それは、柳宗悦(*)先生が言うところの〝アノニマスデザイン〟に通ずる考えでもあると思います。優れた機能を有した秀逸なデザインには、〝誰が作った〟や〝時代〟を超えた無駄をそぎ落とした先にしかない美しさや存在価値があると思います。
小田切製陶所は、デザイン意図が明確で美しく、長く愛用できる陶デザイン製品を作り続けてまいります。
小田切製陶所
代表・デザイナー 小田切裕高
1969 大阪府生まれ.
1990 創造社デザイン専門学校 プロダクトデザイン 卒業.
デザイン事務所、デザイン会社、印刷機材商社、インターネットベンチャービジネスを経て、ニュー・ヨークにて陶芸を始める.
1999 陶芸家 梅棹マヤオ氏に師事.
1999 京都にてフリーランスデザイナーとして独立.
2011 京都造形芸術大学 美術学科 · 陶芸コース(清水ゼミ/八代・清水六兵衞先生) 卒業.
2012 小田切製陶所開窯.
2017 岡山県瀬戸内市牛窓町に製作拠点を移す.
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*柳宗悦(1889 - 1961)民藝運動を起こした思想家、美学者、宗教哲学者。工業デザイナー柳宗理(1915 - 2011)の父.